あるところにワニがいました。
彼女の名前はクロコです。
彼女はいつも水の中から友達を見つけては、
いきなり飛び出して、驚かせていました。
ある日、ペリカンがすいすい泳いでいました。
クロコはビックリさせようと、そ〜っと近づいて、
いきなり大きな口を開けました!
「どう? ビックッリしたでしょ!」クロコがそう言っても、
誰も答えません。ペリカンはもうそこにはいませんでした。
クロコは寂しくて泣きました。
だけどお腹がいっぱいで、すぐに眠くなってしまいました。
その夜クロコは月を見上げて願いました。
「私に友達をください」
あるときクロコは、木にぶら下がって、用心深く水を飲んでいるサルを見つけました。
クロコはサルの美しい姿にひと目で友達になりたいと思いました。
クロコはサルをビックリさせようと、そ〜っと近づいて、
いきなり大きな口を開けました!
「どう? ビックッリしたでしょ!」クロコがそう言っても、
返事はありません。サルはもうそこにはいませんでした。
クロコは寂しくて泣きました。
だけどお腹がいっぱいで、すぐに眠くなってしまいました。
その夜クロコは南十字星に願いました。
「私に友達をください」
次の週、クロコは森の外れで水を飲んでいるシカを見つけました。
クロコはシカの美しい角にひと目で憧れ、友達になりたいと思いました。
クロコはシカをビックリさせようと、そ〜っと近づいて、
いきなり大きな口を開けました!
「どう? ビックッリしたでしょ!」クロコがそう言っても、
シカはもうそこにはいませんでした。
クロコは寂しくて泣きました。
だけどお腹がいっぱいで、すぐに眠くなってしまいました。
明け方にクロコは朝日に向かって願いました。
「私に友達をください」
春になるとクロコは、牧場で水を飲んでいるウシを見つけました。
クロコはウシの大きな目が気に入って、友達になりたいと思いました。
クロコはウシをビックリさせようと、そ〜っと近づいて、
いきなり大きな口を開けました!
「どう?ビックッリしたでしょ!」クロコがそう言っても、
答えてくれる者はいません。ウシはもうそこにはいませんでした。
クロコは寂しくて泣きました。
だけどお腹がいっぱいで、すぐに眠くなってしまいました。
次の朝クロコは真っ白な雲を見上げて願いました。
「私に友達をください」
夏のある日クロコは、ボート遊びをしている少年を見つけました。
クロコは楽しそうな少年と遊びたくなりました。
クロコは少年をビックリさせようと、そ〜っと近づいて、
いきなり大きな口を開けました!
「ねぇ、一緒に遊びましょ!」クロコがそう言っても、
もうそこには誰もいませんでした。
少年は壊れたボートの欠片を残して、どこかへ行ってしまいました。
クロコは寂しくて泣きました。
だけどお腹がいっぱいで、すぐに眠くなってしまいました。
次の日クロコは水面に咲くピンクの花に願いました。
「私に友達をください」
そしてクロコの水辺に近づく者は誰もいなくなりました。
だって、みんなクロコのお腹の中だから。
クロコは寂しくて泣きました。
一週間泣いても寂しさは癒されず、一ヶ月泣いても寂しさは癒えませんでした。
お腹の中でみんなは相談しました。
このままじゃ、居心地悪いし、クロコの涙で世界中が水浸しになっちゃう!
そしてみんなはクロコに手紙を出すことにしました。
その手紙はこんなものです。みんなで相談して決めました。
親愛なるクロコちゃんへ。
ぼくたち、君のことが大好きだよ。いつも一緒にいるから、もう泣かないで。
友達のペリカンとサルとシカとウシとニンゲンより
愛を込めて。
少年が書いて、それをサルがクロコの鼻の穴から突き出しました。
クロコは手紙をもらって大喜びです。
だって生まれて初めての手紙が友達からだなんて思ってもいませんでしたから!
そしてクロコはもう泣くのをやめて、
また新しい友達を見つけにいきました。
おしまい